砂の器(第1話)

「宿命が、痛み出す」




映画版を下敷きにしながら、全く新しい視点から描いた今回の連続ドラマ版。
最初の叙情的な映像が本当に美しく、テレビドラマを見るというより10回に分けた映画を見るみたい。
音楽も素晴らしく素敵の一言でした。
中居くんの持つ造形や表情の美しさを1つの「言葉」として最大限に活用した画面も見事です。
過去の映画は名作ですが、和賀の心理に関しては私たちの想像力に委ねられている部分があったので、全く新しい気持ちで見ることが出来ました。
恩義ある大恩人を殺すにいたる和賀英良の心理。
揉み合う内に不慮の事故で石に頭をぶつけて倒れてしまったその大恩人の顔を見ながら、和賀の中にふと芽生えた悪魔の心・・・・囁き。
中居くんの目の演技と言うか、彼が演じる和賀英良のその目の色の中にその心の動きが見て取れるようで。
身元を判らなくする為に顔や指紋を潰そうと振り上げた大きな石。
それを持つ和賀の息遣いに思わず息を呑みました。
本当は殺したくなんかなかったろうに。
後戻りできない和賀の苦しさが押し迫ってくる。
野心の為に近づいたとは言え、今の和賀には彼の全てを信頼して全身で愛してくれる可愛らしいお嬢様もいたわけです。
和賀が隠しておきたい過去。
その全てを思い切って話せば、それは確かにその事で彼は1大スキャンダル記事としてマスコミに追われて名声を全て失うかも知れないけれど、ピアニストとしての余りある才能があれば何時の日にかありのままの自分の姿で再び名声を手にすることが出来たかも知れないのに。
彼を受け容れて、本当に愛してくれる人だっていたでしょうに。
こうやって殺人犯になってしまうよりいくらかマシだったのに。
それが出来なかったドラマ版の和賀の心の闇とは、一体なんだったのでしょう。
最終回に明かされるとの事ですが・・・・・
そこまで人をそして自分を信じる事が出来ない男になってしまった和賀の過去とは、なんなのでしょう。
丁寧に作り上げられていくドラマの続きが楽しみです。

刑事役の渡辺謙さん。
流石の貫禄です。
それでいて後輩刑事とのややコミカルな会話のやり取りが、やや重めなこのドラマにいい具合に風を通してくれた感じです。
この刑事と和賀との、やがて来るであろう対決シーンが本当に楽しみです。
そして和賀の心の闇を共有していく事になる劇団の女あさみ役の松雪さん。
中居くん演じる和賀英良との並びがなかなか素敵です。
その劇団の主宰者を演じる市村正親氏。
思わずリチャード三世かと見まごうその身のこなしと素晴らしい発声。
ほんの一瞬のシーンでさえもそのカリスマ性が凄かったです。
和賀英良に敵意を持つ評論家演じる武田真治さん。
その皮肉っぽい言い回しと目付きがお見事です。
そして汚れを知らない可愛らしいお嬢様役の京野ことみちゃん。
彼女がとても好演していて、今までに見たことのない表情で良かったです。
そのほか、挙げれば本当にきりがない程で、次回に期待をしています。





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