【植物染め】
植物にはそれぞれ、人に見せる時の色と、媒染によって相手を染める色の二種類があります。
それらは大自然から授かった素晴らしい恵みとも言えるでしょう。
ハーブ染めは、こうした植物染めの中のひとつです。
シルクオーガンジーや、楮で作った手漉きの和紙を、大自然の色で染めてみましょう。
1)植物の薬効について 2)カモミール 3)ハイビスカス 4)ローズマリー 5)クローブ 6)マダー&コチニール 7)生藍 |
8)染色の方法 9)紅花染め(1) 10)藍染め 11)日本の色 12)絹 13)紅花染め(2) |
13)紅花染め(2)
日本の伝統的な紅花の染色法では、発色の際に烏梅を用いました。
成分はクエン酸で、これによって鮮やかな紅色が生まれます。
7月頃完熟して枝から落ちた梅の実を集めて満遍なく煤をまぶし、スノコに並べて濡れ筵をかけ、一晩燻蒸したのちに天日で乾燥させてこしらえたものです。
紅花は酸性で色素が定着するので、この上澄み液の中で約15分繰ることで、紅花の色素を定着させます。
12)絹
絹は植物で染める時に、もっとも染まりやすい素材の一つです。
桑の木につく繭がもっとも良い絹になると言われます。
それは、蚕を育てる時に桑の木がもっとも与えやすい食料であったせいでもあるようです。
この繭を湯に落とした時に糸(生糸)が取れました。
これを湯上げと言います。
それが絹の始まりだと言われています。
この生糸は固くて透明感のあるもので、それを蒸して作ったのがやわらかくて不透明な練り糸です。
現在ブラウスなどに多く使われるのは、この練り糸です。
それぞれに用途がありますが、一般に植物の色で染めやすいのは生糸です。
11)日本の色
日本の色の中の一つである二藍と呼ばれる色は、藍に紅花をかけて染めることで作られます。
二藍は貴族の男性の平常着の色で、その染める色具合で様々な色を醸し出します。
貴族たちはおのおのの色の表現で、それぞれの美を競ったのでした。
平安時代には、染めて作った色の様々な色合いを植物に擬えました。
そして発色に工夫を凝らしました。
女性の十二単の裾の重ねの色合いなどでも、四季感や美意識を表し、そこに教養を見せたのです。
10)藍染め
藍は世界中で親しまれ染められている色です。
この藍は、日本でも木綿の普及と共に広まっていきました。
木綿が染まるのは、茶と紺が殆どの色だからです。
この藍は、藍と言う名の草があるわけではなく、藍と言う色素成分を含む含藍植物を総称して言います。
世界各地では、地域ごとに大量に収穫できる含藍植物を染料に用います。
マメ科のインド藍、アブラナ科の大青、タデ科の蓼藍、キツネノマゴ科の琉球藍などです。
この、藍色素を含む植物は、枯れると茶色にはならずに濃い青になることからその色素に注目されました。
一口に藍と言っても、薄い空色から濃い青まで様々です。
薄い明彩感のある藍色に染めることは、濃い藍色を出すより難しいです。
ゆっくりと時間をかけて染める方が綺麗です。
染色は、薄めの染液で何回も重ねるように染めるのが、色落ちもしにくく丈夫です。
9)紅花染め(1)
紅花染めは、真冬の最も寒い時に行われます。
西洋ではサフラワーとして、サフランの代用として黄色を発色させて染める事が主ですが、日本では古来、このうつくしい赤を発 色させて用います。
この日本の紅花染めの赤はとてもうつくしいものですが、手を凍えさせながら染めてこそ、この赤を美しく発色させる事が出来るのです。
そんなにしてまでこの「赤」を古来日本人が求めて来たことに驚きすら覚えます。
赤は、紫と並んで憧れの色でした。
赤を発色させるハーブにも色々ありますが、それぞれ赤に寄せる思いもさまざまで、そこにロマンを感じます。
8)染色の方法
もともと衣類を染めたのは、虫がつかない様にする為と、色によって位(権威)を誇示する為でした。
又、余分な紫外線(太陽光線)から身を護り遮る為にという事もありました。
抽出液のハーブ&スパイスの量の基本は、布(紙)などの材料と同量です。
70℃から沸騰間近までの温度で、30分ほど煮出します。
染色の時は常時60℃から80℃で。
媒染液は常温(又は30℃程度のぬるま湯)で。
和紙の時は常に常温にします。
7)生藍
生の藍の葉でシルクなど動物性蛋白質の生地を染めると、とても綺麗な空色に染め上がります。
葉を刻んでよくもんだ汁で染めるのですが、この時手袋をしないと手が真っ青に染まってしまいます。
私は、これでシルクオーガンジーを染めて薔薇の形をしたサシェを作ってみましたが、綺麗なものです。
6)マダー&コチニ―ル
マダー(茜)やコチニールで染めてみましょう。
どちらも媒染が先です。
マダーはミョウバンでサーモンピンク(茜色)に、コチニールはピンクに染まります。
コチニールはわずかでも、とてもよく染まりますが。シルクかウール(動物性)でないと染まりません。
シルクは60℃から70℃で。
羊毛は80℃から90℃で染まります。
コチニールはアメリカンインディアンなどがよく使った染料です。
染料の加減で、やわらかいピンクから濃いショッキングピンクにまで色は変化します。
5)クローブ
クローブ(丁子)を煮出した汁で和紙や毛糸を染めてみましょう。
ミョウバンで落ち着いた黄茶色に染まります。
染めた和紙などには薬効も残り、防腐や防虫効果を持ちます。
大切なものを和紙で包んだり、ブックカバーにすると良いでしょう。
4)ローズマリー
ドライにしたローズマリーを抽出した汁で染めてみましょう。
ミョウバンで綺麗な緑がかった黄色に染まります。
消毒効果や防虫効果を持ちます。
毛糸や和紙などにも綺麗です。
和紙は、楮で作った手漉きの和紙を用います。
ぬるめの染液(30℃)と媒染液に、短時間で交互に浸します。
3)ハイビスカス
ドライにしたハイビスカス(がくの部分です)を抽出した汁で染めてみましょう。
ミョウバンで綺麗な赤に染まります。
染める回数や時間で、薄いピンクから赤まで、色の加減は変わります。
2)カモミール
ドライにしたカモミールの花を抽出した汁で染めてみましょう。
ミョウバンで綺麗なクリームイエローに染まります。
シルクなどの場合は、はじめは60℃の抽出液に約20分漬けます。
まんべんなく布がたらいの中で泳いでいる様注意します。
水洗いしてから媒染液で15分、又水洗いして抽出液に10分、と時間を減らしながら作業を繰返します。
繰り返す回数が多いほど、仕上がりの色は濃くなります。
最後に水洗いしたら陰干しして出来上がりです。
1)植物の薬効について
植物には、薬効をもつものが多くあります。
その植物の抽出液と媒染液(ミョウバンや酢酸銅など)で何度も繰返し染めます。
その昔、書物を書くのに用いた紙なども、すべて植物で染めてから使ったそうです。
正倉院に収められている書物は未だに当時のままの美しさを保っていますが、それらもすべて植物で染められていました。
丁子(クローブ)や肉桂(シナモン)、ウコン(ターメリック)なども、
すべて私達を護ってくれる成分を持ちます。
毎日の生活の中にも、これらの植物のこうした薬効を用いてみましょう。