白い影第7回感想

★温もりの冷める時★



今回は、本当に涙なしでは見られない回でした。

冒頭の直江先生と倫子の暖かなシーン。
ごぼごぼと沸くコーヒーの音の効果が素敵でした。
直江先生の淹れる二人ぶんのコーヒー。
そして、二人の照れたような優しい笑顔。
後から起き出して、ベッドの中からそっと足を伸ばしてズボンをはく倫子ちゃんのその足だけのシーンも初々しかったです。

その暖かさがバケツ一杯のタンポポと言う象徴となって石倉さんにも力と光を与えたと思ったのに、どんどん弱っていく。
癌告知。
本当に難しいものなのですね。
ケースバイケースなのではないかと、私も思います。
そして、自分が怖いからではなく、石倉さんは奥さんの為に「嘘」の中に入ってきたのではと気付く倫子。
そんな倫子の顔を見る直江先生の眼の色は、石倉さんの奥さんへの思いを、自分に重ね合わせていたのでしょうか。
そして、小橋先生もまた、奥さんの様子を見ていて、自分もまたこの石倉さんのケースに関しては「嘘」に入って行こうとする。
肺炎で苦しい息の下でさえも、奥さんを気遣って冗談を言う石倉さんの心に泣けました。
又、ビデオを巻き戻して見て気付いたのですが、看護婦さんたち、多分自分たちがいきなり石倉さんに抱きつかれそうになってビックリした話をしてひそひそ言い合っていたのですね。
病人とも思えない力って。
死を前にして、暖かなぬくもりを求めてしまう老人の心。
そこに若い女性に対するある種の思いも加わって、実際にそう言う行動を咄嗟にとってしまう患者さんもあるのでしょうね。
それこそ時として下の世話までしてくれる看護婦さんたち。
石倉さんも、つい甘えてそんな気持ちになってしまったのでしょうか。
それは、死を前にした男の本能なのでしょうか。
でもそれは、結局はただ、若くて元気な体のぬくもりで、優しく自分を赤子のように抱きしめてもらってぬくもりを感じたかった。
前回、痰を除去してもらった後に直江先生に抱きついて泣き、暖かく抱き取ってもらったように。
根本はそういうことなのではないかなと思いました。
直江先生に言われて、感じるものがあってそんな石倉さんの「心」を受け止めてあげた倫子。
直江先生は、淡々と語りながら、自分自身のことと重ね合わせて死を前にした男の気持ちを語っていたように思いました。
生きている人のそのぬくもりは、どんなにか暖かかったことでしょう。
静かに淡々と自分の死を受け止めていく石倉さん。
この静かな展開に、かえって涙を誘われました。
そして最後に奥さんに笑顔を見せて永眠した石倉さん。
夫の死に取り乱して、「胃潰瘍だと信じていたのに」と言う奥さん。
知りたかったのではなく胃潰瘍のままであってほしかったのでしょう。
癌だと言う事自体を、今夫が死んでしまったその事実さえ嘘だと言って欲しかったのでしょう。
けれど、内縁の妻のままだった彼女への夫からの「愛のプレゼント」とも言うべき婚姻届とその裏の言葉に、夫もまた自分に「嘘」と言う愛をくれていたのだと、その中の真心を受け取り、何とか立ち上がることを決意したのでしょうか。
彼女はこの婚姻届を一生の宝物として残りの人生を歩んでいくのでしょうか。
直江先生に手渡されたハーモニカ。
石倉さんもまるで自分の形見を受け取ってもらおうとするかのように、直江先生に渡そうとしていたけれど。
「石倉さんは納得して旅立てたんですよね」と言う倫子。
それに対して、
「僕たちが整えたのはあくまで形だ」
「死が怖くない人なんていない」
「石倉さんの強さが全てだった」
と言う直江先生。
そんな直江先生の病気も、大分進行しているようで、発作を起こして注射を打っているところをついに三樹子に見られてしまう。
院長も、小夜子と直江の怪しい関係を知り(自分も小夜子と怪しい関係にあるらしい院長の、この時の表情の演技、最高に面白く良かったです)薬の事に辿り着くようですし。
いよいよ次週以降は直江先生自身のお話も色濃くなるようで、期待しています。





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