白い影最終回感想

★君よ笑顔のままで★



死を前にした直江先生の最後の我が儘。
愛する人の心からの笑顔を最後まで見ていたい。
そんな我が儘を受け容れてくれるだろう倫子の強さに、直江先生は甘え、そして護られていたのかもしれない、と思った最終回でした。
それは残される身には我が儘な願いなのかも知れないけれど、本当に愛すればこそ、そのせめてもの願いはかなえてあげたいとも思う。
死に行く人の最後の願いを叶えてあげることこそ、「直江先生のためにして上げられる何か」だったのでしょうか。
何しろ、彼は誰よりもこの病気のことを熟知していて、その彼が自分はもう助からないと悟ったときに決めたことだから。
死を悟り諦めながら、いつも不安と恐怖におののいていた直江先生。
その彼が死の淵で見つけた綺麗な目をした蒲公英が、倫子だから。
だからこそ、彼女が直江先生の心を最後まで温めつづけることが出来たこと。
そのことが嬉しく思います。
死ぬときは誰しもたったひとり。
その時に直江先生はその温かな笑顔を胸に抱きながら、微笑んで死にたかった。
そして自分は消え行く存在で、だからあとかたもなく消えようとしたのでしょうか。
そして残された若い倫子が、やがて自分じゃない男性に出会って愛する人の子を産んだときに、自分はそれを見守っているって。
けれど、倫子がこの世でもっとも愛した人は直江先生。
一生に一度の百年の恋(あるいは最後の恋)であったその証拠に、最後にパンドラの箱を開けたら残っていた「希望」の象徴に、倫子の中の新しい生命(いのち)が芽生えていた。
そんな感じを受けました。
北海道旅行から帰ったときに、倫子はその息吹に気付いたのでしょうか。
直江先生が帰ったらまっさきに告げようと思っていたのでしょうか。
赤ちゃんが出来たことをさぞ倫子も伝えたかったことでしょう。
でも、こんなに愛されて、そして最後まで直江先生に光を与えることが出来て、本当に愛すればこそやはり倫子は幸せだった、と思いました。
素直な倫子だけが、直江先生の温かさや純粋さを、曇ることなく見抜けたのかも知れませんね。

生まれたままの自分に帰りたい。
それが直江先生にとって、故郷の愛する湖に沈むことだった。
直江先生は死んだのではなく、あの研ぎ澄まされた美しい湖になって生まれ変わり、今も息づいているのだと思いました。
冬の北海道の湖が、あんなにうつくしいものだとは知りませんでした。
湖をそめる落日の前で、ひとつの毛布にくるまる直江と倫子。
「失楽園」のラストの、裸に帰って愛する二人が樹海の中に飲まれていったイメージショットに劣らないくらいの名ショットだと思いました。
直江先生の切ない諦念。
哀しかったです。
自分と関わった人達に向ける哀しくも切ない笑顔に泣けました。
母親の腕の中で、泣きじゃくる倫子。
直江先生の思いをしっかりと受け止めて、そんな娘を励まし支える母。
この親子なら、きっと直江先生の子供を育てていける、と思いました。
そしてビデオレター。
一瞬気恥ずかしかったですが、直江先生は自分の言葉で、本当は倫子にこのことを伝えなければいけないと思っていたのでしょうね。
自分が死んでしまったら、倫子も嫌でもそれを知らされることになるのだけれど、そのとき彼女にどういう形で自分と言う人間を残してやれるのか。
直江先生はもしかしたら、そう言うことまで考えているのかも知れないと思っていましたが、その事が判った気がしました。
第1話のラストでの直江先生のモノローグは、やはり直江先生のこの遺書の一部だったのですね。
そしてはじめて呼んだ「倫子」と言う言葉と「愛している」と言う言葉。
倫子はその愛を受けて、これからも生き、子供にもその命の尊さを伝えていくのではないでしょうか。

最後に、こんなに美しい純愛ドラマに出会えて、そしてファンとしても直江役を演じる中居くんに出会えて、本当に感謝しています。





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