花模様

『香りと私』

わたしがはじめて香りに惹かれたのは、まだほんのこどものころ、母や若かった叔母の化粧台のまえでのことでした。
きものを着せてもらえる御節句の日だけ、まだ3歳ばかりであったわたしは御化粧をすることをゆるされました。
そのときのなんともいえないドキドキした想い出。普段でも、こっそり化粧台の前で紅をさし、あとでこっそり拭ってオスマシして いたものです。その化粧台のほんのりとした香り。 これがわたしのおさない 日の香りの最初の想い出です。
やがて思春期をむかえ、 周りが御化粧に興味を持ちはじめた頃、わたしは、紅をささなくとも香りにだけ は人一倍強い興味をもちました。
はじめて貰った御小遣いで買ったのが、わずか1000円ばかりの香水。それをひと吹きすることで、こころにほんのり紅をさしたようなときめきを覚えました。
香りとは不思議なものですね。 それを香ると、もう何十年も前のことなのに、そのときのことを今現在のように思い出す・・・というよりそのときの息遣いが胸に熱くよみがえります。
わたしだけの香り。 わたしだけの、そのときの自分の想いを現してくれる香りを求めて、それからわたしはのめりこむような想いで香りを身につけるようになりました。
何かをする時、その香りを身にまとうことで、それを実現させる自信が湧いてくる。勇気づけられる。 夢がかなう。 そんな気さえしていたのです。
物語に出て来る「惚れ薬」に恋していた 私は、そのことで今の先生とお会いすることが出来ました。 そしてアロマテラピー&ハーブに出会うことが出来たわたしは、今毎日その香りのお世話 になっています。
アロマテラピー。
それはもしかしたら、朝起 きた時のお味噌汁やコーヒーの香りであったり、ハッカやアサツキ、蜜柑を剥 いた時の何とも楽しくなる香りのように、日常のさりげない生活の中に息づいているものなのかもしれません。
それは、日常の何でもないことなんだけれど、そこに自分だけの「夢」「私だけの夢」を紡いでいってくれるような気がしています。

(京都ハーブソサエティ・うすべにあおい創刊号掲載)



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