Clove−古代よりの秘薬−




古代、エジプトの女王クレオパトラが、ローマの英雄アントニウスにはじめて出会う時、みずからの帆船に金と紫の帆をはためかせ、潮風と共にいっぱいに香らせたのがこのクローブの香りであると言われています。彼女は、この香を駆使する事で、英雄達の心を惹きつけました。
この甘くスパイシーな香りは、このように媚薬としても高い効果を持つことで知られています。
日本でも、春先に咲く沈丁花の香はいいものですが、この花はこのクローブ(丁子)の香と沈香の香を合わせたような香であることから、その名を付けられています。
又、このスパイスは強い殺菌・消毒効果と防腐効果・防黴効果を持つことから、古来ミイラ作りの材料としても重宝されてきました。
このクローブを用いて作るのがフルーツポマンダーですが、クローブを刺す事でカビや細菌を寄せ付けず、果実が腐らずにドライとなる事からもその効果が証明されます。
ゴキブリの嫌いな香りでもあるので、台所や水廻りに重宝です。
このようにして非常に有益なクローブですが、この精油は数ある中でも特に強力な精油で、歯科医などでも麻酔用に使ったりしますが、その使用は注意を要し、専門家の知識が必要です。
しかしスパイスとしては、日常生活の中でも、とても活用させることができるものです。
食用として、頂き物の大きな塊のハムなどに刺しておくと、ハムの日持ちがよくなります。
焼く時も、胡椒などに加えて、粉にしたクローブを少々用いると、とても美味です。
ホットウイスキーやホットワイン、又スパイスティーとして飲むと、食欲増進となり、体を温めます。
又、私は、ポトフーの材料である、プティ・サレ(塩漬け豚)を漬け込む時、その塩漬け液にクローブを少量加えます。
インドネシアには、このクローブを香り成分として使用したガラムシガレットと呼ばれる煙草があります。
私は、この煙草に憧れて、1箱手にしてみました。
私はもともと煙草は吸えないので、口の中に含むのがせいぜいではありますが、あとには何ともいえない甘い味と香りが口の中にじんわりと残るのでした。
それ以来、時たま、長い夜にふと、その1本を手にして、古代のロマンに思いを馳せています。

(京都ハーブソサエティ・うすべにあおい7号掲載)




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